第14回 藤さんの旅と食と人と~瀬戸内の芸術島とうどんと~

香川県に住む知人達と話をすると、かなりの確率で『またおいしいうどん屋を見つけた』という会話が始まる。いまだに新発見があるという、うどん県の奥行きの深さに驚く。
最初の腹ごしらえは、高松市の名店「なかにし」を訪ねた。お昼より少し早い時間だったにもかかわらず広い駐車場には何台も車が停まっていて、店内も賑わっていた。僕がお店を出る頃には行列ができていたのでラッキーだった。ネギをたっぷりかけた冷やし天ぷらうどんに、おでんをオプションでいただく。香川では何軒かうどんをいただいたが、その中でもコシが強くて食べごたえあった。レモン汁を少し絞った出汁が麺に絡んでスーッと喉を通りすぎてゆく。至高の時間。

これも香川県人がよくする話のネタですが、香川でも西と東では味が違う。やっぱりイリコが取れる西がうまいとか…。僕にとってはたいていどこでも美味しい。

さて、腹ごしらえをしたあとは高松の築港からフェリーに乗って、瀬戸内海に浮かぶ直島へと。直島はベネッセが開発に力を入れて、今や芸術の島として有名な場所。
すでにアートっぽいボディデザインが施されたフェリーは穏やかな瀬戸内海を気持ちよさそうに滑り出す。青空と海が溶け合う。いやでも期待は高まってくる。

直島のフェリー到着場所では、草間彌生の赤いカボチャのアートが少しおどけた雰囲気で出迎えてくれる。

フェリー乗り場にほど近いお店で、予約しておいたレンタサイクルで早速走り出す。それほど大きくはないこの島では車よりも自転車が断然便利です。台数に限りがあるのであらかじめ予約を入れておくことをお勧めします。
海岸沿いを走り出して、少し傾斜のある坂道を走る。標高が高くなり、木々の間から時々見える海が美しく映える。

この島のメインホテルとなるベネッセハウス、地中美術館などを遠目にしながら自転車で快調に進んでいく。この島は猫が多いことでも有名だそうで、ベネッセハウスの門の上にも猫ちゃんが。

そして僕がめざすは「家プロジェクト」。

家プロジェクトは、直島の古民家や神社とか歯医者さんだった建物を芸術家たちがアート作品として甦らせた作品群。狭い路地に点在する家々を巡っていきます。たしか7つくらいかな。これがまた、それぞれに個性があっておもしろい。派手な演出というよりは、静かに思索にふける空間を提供してくれているように僕には映りました。

この日の宿泊場所は、島の中腹になる「MY LODGE Naoshima」という名前の小さなペンション。清潔な客室の窓からの見える海がやはり美しい。朝食のパンがおいしかった。

瀬戸内では、この直島に限らず他の島でもアートの取り組みが活発に行われていて、「瀬戸の花嫁」が流行った僕らが子供の頃に比べると、ずいぶん昔とは様変わりしているようだ。
外国人-特にヨーロッパ人―に人気があることも頷ける。

原風景を活かしながら新しい活力を生んでいく取り組み。
ここには、そのことを実現させようという人たちの熱意と地元の方々のあたたかい協力があるように思えた。

おわり

執筆:藤さん
   ビジネスマンとして世界各国への出張を30年以上続けながら、趣味の旅行でもあちこちに出かける好奇心旺盛なアラ還男子。
   山本代表の長年の友人で、ぼちぼちと旅のコラムをおもびよのブログで書いています。