第5回 藤さんの旅と食と人と~利尻島・礼文島-天国へ続く花の道-~

利尻山は利尻富士と異名を取る名山で島のどこにいてもその美しい雄姿を望むことができる。誰もいない池の鏡のような水面に移る山にしばし目を奪われる。
北海道の定番土産「白い恋人」のパッケージの風景も利尻山であることを初めて知った。

夜は地元民が集まる居酒屋で魚料理を堪能する。かつてにしん漁で栄えた姿を想像しながらお酒を頂く。そしてそのあとは、星空散策。満点に星が輝く光景は、やはり最果ての地に居ることを実感する。

翌日のお昼。何気なく入ったラーメン屋さん「味楽」。利尻昆布の出汁がうまいと思っていたら、この店、新横浜ラーメン博物館に常設出店している有名店でした。不思議。

3日目の朝。利尻島からフェリーで45分。礼文島のエントランスである香深の港に到着。
稚内からだと約2時間の道のりになる。

港まで迎えに来てくれていたペンション「うーにー」のご主人がハイキングコースまで車を走らせてくれる。「午前中いっぱいでこのコースを歩くとちょうどいい」と言って彼は地図を示してくれた。 花の浮島と異名を取るこの島には、山道を少し歩くだけで様々な高山植物を見ることができる。私が訪れたのは8月だったので、ややピークは過ぎていたが、それでも色とりどりの珍しい草花を写真に収めることができた。

礼文島を舞台にして吉永小百合が主演した「北のカナリヤ」という映画のロケ地がそのまま残されている記念館を過ぎて、再び山道を進む。やがて森を抜け、後ろを振り返ったとき、僕はその光景に息を飲んだ、利尻富士と呼ばれる利尻山が海の上に浮かび上がっている。この絶景を一人締めしているような贅沢。

ふたたび緑に覆われた岩の道をひたすら進む。どこまでも雄大な景色に自分が溶け込んでゆく。

ふたたび香深-ここが礼文島の市場の繁華街―に降りてくる。千鳥食堂にて、名物「ほっけのちゃんちゃん焼」をいただく。目の前の網の上で、ねぎみそが塗られたほっけが香ばしい香りが漂ってくる。肉厚の身が柔らかい。歩き疲れた身体にエネルギーが宿ってくる。

学生時代の友達がここに来た思い出を歌った歌を聴いて以来、ずっと行きたかったこの島にようやく来ることができた。
♪少し寒い風の中を登っていった 桃岩という名の小さな丘の上
澄んだ空と澄んだ海が見える 少し風が強いけどあなたとなら怖くない…

旅人のお気楽な感想かもしれないけれど、この2つの島で見た景色や体験したすべてが、天国に続く道を歩いているような、そんな気持ちを確かに抱いた。

終わり